扇状の飛沫が戦局を塗り替える夜
扇状の飛沫が戦局を塗り替える夜
樋口楓さんが『スプラトゥーン3』でヒッセンを軸に立ち回りを詰め、短射程と曲射を生かした判断で試合を動かした配信。装備選びからモード別の関与、終盤のヤグラ管理まで、細かい試行錯誤がライブに刻まれた。
近年『スプラトゥーン3』はシーズン更新のたびにブキ構成やサブ・スペシャルの環境が揺れ、コミュニティの研究が活性化する流れが続いている。今回の配信は、そうした文脈の中でヒッセン運用の現在地を具体的に映し出した。
任天堂 公式『スプラトゥーン3』サイトでは、ブキやルールの基礎情報が明快に整理されている。本配信の細部を追体験したいリスナーは併せて参照すると理解が深まる。
開幕の方針確認と装備調整
冒頭、樋口楓さんは「今日はですね、スプラトゥーン新しく線が入ったということで、その必戦変わってこうかな」と宣言し、ヒッセン前提のギアと操作イメージを整えた。ヒッセンは短い射程と扇状のインク飛沫で接近戦に強い一方、インク効率管理が難しい。樋口楓さんは「バシャリ癖すごいから注意しなあかんな。すぐなくなりそう、インク」と自己分析し、無駄撃ちを抑えた接近角度の組み立てに意識を向ける。ギア検討では「イカニンは…トーピードとか、ジャンプしなあかんやつあるから、そんな刺さらん気」と、潜伏強化と被追跡リスクのトレードオフを冷静に吟味。さらに「イカ速と回復量上がるやつ。サブインク、いや、サブインク回復ってこと?」と回復・機動のバランスを測り、塗り寄り編成に対しては「塗り武器やん、全員」とメタ把握も怠らない。初戦から段差越しの曲射や斜面の有利を活かし、敵の足場剥がし→近接確定数の流れを試しつつ、インク残量の閾値を体に馴染ませるプロセスが丁寧だった。
ドリンク運用の再考とナワバリでの関与
ヒッセンに「ドリンク」(エナジースタンド)をどう噛み合わせるかも熱心に検討。「結局ドリンク必須…実際そんな噛み合ってなかった」とし、その理由を「潜伏する武器やのにドリンク飲んだら位置バレるから」と明言。潜伏奇襲を主体とするヒッセンの設計に、可視化リスクが干渉するという視点は実戦的だ。ナワバリでは人数差や前線の張り直しに応じて攻め時を選別。「あ、全然攻め時じゃなかったみたい」と引き際を即断した一方で、塗り返しの優先順位を見直して自陣整備に回る判断も光った。終盤の塗り速度を上げるため、一本道ではなく斜線を刻む扇状バシャで足元確保→横広がりの塗りを重視。敵の塗り偏重に対しては「全然縄張り向きの武器じゃないやつ持ってるやついる」とメタ外れを突くコメントも交え、試合ごとの解像度を上げていく。この局面の思考がよく出ているのが潜伏と可視化の考察場面だ。
初見に近いアサリでの学習サイクル
ルール変更のタイミングで「アサリ覚えるか。せっかくやしな。付き合って。私と。10人で」と宣言。未習熟ルールに対しても臆せず挑む姿勢が頼もしい。実戦ではパス回しとゲート前でのライン維持に苦戦しつつ、「でっかいあさりはシュートできたな。ちびあさりできんかったな」と自己採点。ゴール周辺の密度が上がる時間帯の視界確保・カバー角を重視し、「カバーしとけばよかった」と反省点を即時フィードバックして次の攻撃に活かした。また、味方編成を見て「ドリンクなのかな、アサリ。いやでもどうだ…」と、復帰速度・継戦力を伸ばすスペシャル選択の意義も議論。リスナーからも「アサリけっこう飛ばないんだよね」と仕様面の補足が飛び、チャットとプレイの往復で学習が加速していく構図が印象的だった。
自陣整備と終盤塗り返し、ナワバリの難所
ナワバリでは序盤から敵が前線を上げてくる展開もあり、「やばい、届かん、届かん」と短射程の限界を感じる場面が続く。そこで樋口楓さんは、真正面からの撃ち合いを避け、曲射で高台に触れながら横から足元を崩す選択へと舵を切った。終盤には「にしてもちょっと自陣塗れてなさすぎ?やっぱ一番デスしてるやつがここ責任取って塗るべきなんのか」と役割分担の再定義に踏み込み、打開が遅れた試合の総括を行う。この時間帯、リスナーからは「金モデの方が塗れるよ」と武器選択の示唆も出るが、樋口楓さんはヒッセンの扇状塗りを最大化する導線取りを模索し続けた。塗り返しの意図が明確な終盤の整理場面では、自陣から中央へ扇状に道を描くように塗りを伸ばし、味方の前進に合わせて二枚目三枚目の塗りレイヤーを増やす運びが丁寧だった。
終盤の総括とヒッセン運用の到達点
ラストスパートでは「ちょっと、最後気持ちよく終わりたいのに」と悔しさを覗かせつつも、「こうやって前を出し手からね、勝てんくねって分かってんだよね」と無理攻めの危険を明確化。「スプラトゥーンって、味方ゲーです」と役割連携の重要性を再確認し、個の打開ではなく全体最適で試合を作る視点に立ち返った。配信の締めでは「ヒッセン持っちゃったらシューター系持てねえわ」「ルール関与するやつのほうがやっぱヒッセンって向いてんのかもしれんな」と所感を述べ、ヒッセンをエリア・ヤグラ・アサリの“関与”軸で評価。終幕のトーンは和やかで、参加リスナーへの敬意と次への意欲が同時に感じられる。締めの挨拶の場面では、配信全体を貫いた実直なトライ&エラーが柔らかい言葉で総括されている。
リスナーの反応も配信の熱量を後押しした。「こんばんはー」との挨拶から「Wi-Fiダメなん?」の確認まで、チャットは技術面と戦術面の両輪で会話を積み重ねる。樋口楓さんが「スプラトゥーンっていうゲームは…ドックに有線で繋いでやろうね」と語った場面は、安定回線が競技性を支えるという基本をあらためて思い出させた。